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2008年1月14日

明日はいよいよ腫瘍の摘出手術だ。
タイムリミットまであと一日。どうやって過ごしたらいいのだろう。やり残したことはないのだろうか。たくさんあるような気がするけど、でも、切り取られるおっぱいのために、これから具体的にできることが思いつかない。何をしたらいいのかわからない。
失うとわかっているのに、どうすることもできない無力感。失うことを自覚しつつゆっくりと失っていくことは、ある意味とても残酷なのだと痛感した。
一日に何度も、鏡に上半身を映して、おっぱいを見ていた。
やっぱり左のおっぱいのほうが好きだ。下側がむっちりふくらんでいてかわいい。でもそこにメスが入って切り取られるのだ。いくら右側のおっぱいがそのまま残っても、やっぱり左ほど形がかわいくない。
いくら眺めても見納めだと割り切れない。あきらめがつかない。おっぱいの形が変わるのは、やっぱり悲しい。
癌告知から3ヶ月が経って、少しずつあきらめをつけてきたつもりなのに、実は全然あきらめきれていなかったんだと、改めて思う。表面上は明るくふるまっているけど、心の中では、ものすごくじたばたしているのだ。もう自分ではどうしようもないところまで追い詰められたからこそ、自分の気持ちに整理がつかなくてうろたえている。
時間が戻ってほしい。自分が癌だと知らなかった半年前に戻りたい。知ったからにはどうしても切除しなくちゃいけないし、切除しないで癌が増殖する恐怖と向き合えるほど、私は強くないしまだ生きたい。
癌だと知らなかったときは、このおっぱいが一生私と共にあることを疑いもしなかった。それがいかに幸せなことだったかに、失おうとして初めて気づいた。
私は自分の身体の中で、おっぱいからお腹にかけてが一番好きだった。おっぱいはそんなに大きくないけど垂れてないし、乳首はピンクだし、ウエストはちゃんとダイエットするとキュッとくびれて腹筋も浮き出た。そこだけは二十代の女の子と比べてもそんなに見劣りしないという自信があった。他の部分、たとえば足は太いし短いから、最初からそんなに愛着がないので、いくら傷がついてもそんなにショックを受けないと思うけど、おっぱいは自分にとって唯一自信がある部分だからこそ傷つけたくなかった。そのままの形を保っていたかった。
これから年を取っていっても、おっぱいからお腹の線だけはがんばって今のラインをキープするぞ!と平和に思っていたのに。
今までは、男の人とエッチするときも、自分の胸からお腹を見せるのがちょっとした楽しみだった。「胸きれいだね」と言ってくれる人もいたし、何も言わずにおっぱいをいとおしんでくれた人もいた。でもきっと、これからはそれができなくなる。これからは、初めての男の人とエッチするとき、一体どのタイミングで胸の傷のことをカミングアウトすればいいんだろう? そもそも男の人の前で裸になる勇気が出るのだろうか? 男の人がドン引きしなくてすむくらい、キレイな形に残るのだろうか?
もしかして私は、なし崩しにもうエッチができなくなるのだろうか? それだけじゃなく、今は頭がハゲだから温泉やサウナに行けないのだけれど、髪の毛が生えてきても、今度はおっぱいの傷を見られるのがイヤで行けなくなるのだろうか? そしたらなし崩しに、私は今後、温泉やサウナにも入れないことになる。あんなに好きなのに…。
 でももうジタバタしても仕方がない。もうこのおっぱいとはさよならなのだ。それは決まっているんだ。
 生きるためには、おっぱいを切らなくちゃいけないんだ。
 今までつけていたブラジャーを洗った。ワイヤーの入ったレースのブラジャー。花柄の私のお気に入りだ。これを次につけられるのはいつになるのだろうか? 次につけるときは、どんな気持ちになっているのだろうか?
 願わくば、あまりショックを受けていませんように…。

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プロフィール

がおんちゃん

Author:がおんちゃん
46歳の女性TVディレクターです。ドキュメンタリーを制作して20年。
2007年の9月に虎の門病院で乳癌を告知されたのですが、ディレクターのサガなのでしょうか、告知されたその日から、乳癌になった自分がどうなっちゃうのかを毎日観察しては日記に書いていました。その日記を、1年遅れでアップしていきます。
「とくダネ!」を見て来てくださったみなさん、どうもありがとう。
私の乳癌体験を参考にして、早期発見だったら癌なんて怖くないので早く検診に行ってね☆

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